◇コルシカ島の至宝
イタリア半島の西に位置するフランス領コルシカ島は、フランスの英雄、ナポレオン・ボナパルトの生誕地として知られる。この島にあるアジャクシオ市立フェッシュ美術館が所蔵する、イタリア絵画の名品とナポレオンゆかりの作品を紹介する展覧会「イタリア美術とナポレオン」が10日から28日まで、大丸ミュージアム・東京で開かれる。同美術館の至宝でアジア圏初公開となるボッティチェッリの絵画「聖母子と天使」をはじめ、15~20世紀の絵画・彫刻など約80点を展観する。
フェッシュ美術館が開館したのは1860年。ナポレオン1世の母方の叔父、ジョゼフ・フェッシュ枢機卿(1763~1839)のコレクション約1000点を所蔵する。
枢機卿が収集した美術品は、実に1万6000点。コレクションの大半は枢機卿の死後、遺言に基づいて売却され、ダ・ビンチやレンブラントの絵画など、今や世界の著名美術館に収まっている傑作が多数含まれていた。散逸した作品も少なくないが、約1000点が故郷アジャクシオ市に寄贈された。
中でも重要なのは、13~18世紀のイタリア絵画。フランスではルーブル美術館に次ぐ数と質を誇る。最大の至宝は、ボッティチェッリの「聖母子と天使」だ。独立後に描いた最初の作品とされ、全身を現した聖母、鑑賞者側に視線を向けない天使の表現などに独自性がうかがえる名作だ。ベッリーニもイタリアルネサンスを代表する一人。「聖母子」は、優しさの中にやや憂いを帯びた聖母の表情が印象的だ。
17世紀になると、他の欧州地域と同様、イタリアでも風俗画や風景画が多数描かれた。ファン・ウィッテルは、ベドゥータ(都市景観画)の画家として活躍。ローマの景観を何度も描いている。
本展では、ナポレオンにちなむ美術品や珍しい資料も展示される。1804年の戴冠式でのナポレオンを描いたジェラールは、皇帝一家付きの肖像画家。ナポレオンの堂々とした姿を見事にとらえた。
地中海の小さな島で大切に守られてきた、珠玉の作品群の日本巡回は、この東京展が最後。希代の個人コレクションの精華を、じっくり堪能したい。
【会期】
9月10日(木)~28日(月)。会期中無休。入場時間は午前10時~午後7時半。木・金曜は午後8時半まで、最終日は午後4時半まで。
【会場】
大丸ミュージアム・東京(JR東京駅八重洲北口、大丸東京店10階、電話03・3212・8011)
【入場料】
一般1000(800)円、大学・高校生800(600)円、中学生以下は無料。かっこ内は10人以上の団体料金。
主催 毎日新聞社、NHK、NHKプロモーション
後援 フランス大使館
協力 日本航空